日経新聞より
京都大の山中伸弥教授と慶応大の岡野栄之教授のチームは二十五日、山中教授が人の皮膚から世界で初めて作製した新型万能細胞(iPS細胞)のサルを使った治療技術の開発実験に着手することを明らかにした。脊髄(せきずい)損傷の患者に生かせる治療技術を二年後をめどに確立したいとしている。
iPS細胞の研究者ら約千人が参加して京都市内で開かれたシンポジウムで明らかにした。
岡野教授の研究チームは、すでにネズミのiPS細胞を神経細胞に成長させて、脊髄損傷を起こしたネズミの運動機能を一部回復することに成功。来年から人のiPS細胞を神経細胞に成長させ、サルを使って患者に応用できる治療技術の開発に取り組む。
サルで技術が確立できれば、人への応用にめどがつくという。二年後にもサルで成功させた後に実際の患者で試す考え。ただ、iPS細胞を使った治療技術の実用化には一定のルールが必要なため、iPS細胞の臨床研究指針を国が早急に作るよう訴えた。
研究を加速するために文部科学省などが来年一月にも発足させる全国規模の研究者ネットワーク組織「iPS細胞研究コンソーシアム」については、トップに理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの西川伸一副センター長が就任する見通しになった。
iPS細胞で脊髄損傷のマウスの症状が改善 慶大チーム
慶応大学の岡野栄之教授(生理学)は25日、京都市で開かれたシンポジウム「多能性幹細胞研究のインパクト」で講演し、京都大との共同研究で、脊髄(せきずい)を損傷したマウスに、iPS細胞から分化させた神経前駆細胞を移植し、症状を改善できたことを明らかにした。
岡野教授らのチームは、胸髄損傷により後ろ脚がまひしたマウスに対し、マウスの体細胞を使ってつくったiPS細胞から分化誘導した神経前駆細胞を損傷後9日目に移植した。その結果、症状は、後ろ脚に体重をかけられるまでに回復したという。腫瘍(しゅよう)はできなかった。また、神経前駆細胞が神経細胞に分化するだけでなく、移植を受ける側の神経の再生も促していることも分かった。
iPS細胞が実際に治療に使えるかどうかについては、マサチューセッツ工科大のチームが重症の貧血のモデルマウスを使って症状改善に成功している。脊髄損傷の再生医療をめぐっては、米国では来年にもES細胞を使った臨床試験が始まる見通しだ。
http://www.asahi.com/science/update/1225/OSK200712250065.html
朝日新聞